RAYEが描く一本の物語──THIS MUSIC MAY CONTAIN HOPE.

ロンドン出身のグラミー歌手 RAYEが描く、劇場型オペラのようなアルバム体験

RAYEの最新アルバムは、まるで一本の映画、あるいは劇場型のオペラを観ているかのような壮大な世界観を持った一枚だ。彼女の作り出す音楽と歌には常にストーリー性があり、聴く者の琴線に触れる力がある。 痛みを音楽へと昇華するその歌詞の強さは圧倒的で、特に 「Click Clack Symphony」「WHERE IS MY HUSBAND!」 のインパクトは別格だ。

このアルバムはPOPでもR&Bでもない、どこか“オペラ的な激情”を帯びた独自の作品世界を築いている。


2曲目「I Will Overcome」
劇場でオペラを聴いているような壮大なサウンドが特徴。重厚なストリングと語りのような歌い方が印象的で、アルバムの世界観を一気に広げる。

3曲目「Beware… The South London Lover Boys.」
RAYEらしい豪快なコーラスと、女性ボーカルの逞しさが際立つ勢いのある一曲。アップテンポのコーラス曲になると彼女のパワーが一気に花開く。
「WHERE IS MY HUSBAND!」が好きな人は確実に刺さるタイプの楽曲。

4曲目「The WhatsApp Shakespeare」
クールで少しダークな雰囲気をまとい、映画音楽のような世界観を展開する。低音の語りと力強いボーカルの対比が美しい。

5曲目「Winter Woman」
語りのようなボーカルとストリングが印象的。静けさの中に強さがある、物語の“間”を感じさせる一曲。

6曲目「Click Clack Symphony feat.Hans Zimmer」
RAYEにしか歌えない独特のリズムと、“Click Click”というフレーズの中毒性が強烈。MVも非常に印象的で、一度聞くと忘れられません。最後の映画のような展開も見事で、作品としての完成度が高い。


7曲目「I Know You’re Hurting」
前半は抑えた歌唱で始まり、後半は豪華なバックサウンドとともに力強く歌い上げる。感情の振幅が大きく、聴き応えのある一曲。

8曲目「Life Boat.」
ゆったりとした曲調から徐々にアップテンポへと変化していく、ハウス的な構成が面白い。アルバムの中でも異色の躍動感を持つ。

9曲目「I Hate The Way I Look Today.」
古いJAZZやBig Bandの雰囲気をまとった楽曲。下に置いたこの曲はオーケストラを率いた動画あるのですが、それが見事です。映画音楽的なアレンジが本当に際立っています。

10曲目「Goodbye Henry feat.Al Green」
緩やかなイントロからじっくりと歌い上げる。Al Greenの参加が驚きで、彼の歌声が曲に深い哀しみを与えている。
歌詞は悲しみに満ちており、Al Greenへのオマージュとしても美しい。

11曲目「Nightingale Lane」
ソウルフルで劇画的な歌い上げ方が印象的。徐々に盛り上がっていく構成が心地よく、アルバムの流れを強く支える一曲。

12曲目「Skin & Borns.」
アップテンポで女性コーラスが映える楽曲で、にぎやかでノリの良い雰囲気があり、RAYEの“楽しませる力”が存分に発揮されていて盛り上がります。

13曲目「WHERE IS MY HUSBAND!」
極めつけの豪快な盛り上がる楽曲!もうこれ以上に面白い曲はないよね、歌詞も面白いし、サウンドだけじゃなく、女性コーラスのかっこっ良さが群を抜いています。
豪快で盛り上がる楽曲で、歌詞の面白さ、女性コーラスの迫力、サウンドの勢いがすべて最高レベル。ノリノリにならないわけにはいかない。かっこよさがあります!MVも“夫を探す妻”というコミカルな設定で、どんどん引き込まれます。こういう劇的な雰囲気でMVを作り上げて引き込んでいくのがうますぎます。終わり方も綺麗で曲としての完成度が素晴らしい。

14曲目「Fields. feat.Grandad Michael」ゆったりと歌いGrandad Michaelの語りでしっとりとした曲になっています。

15曲目「Joy」今までとは少し雰囲気を変えて、アフリカンな雰囲気のバックサウンドも織り交ぜつつ、アップテンポに歌い上げていきます。こういう女性コーラスで盛り上げていくうまさはさすがですね。

16曲目「Happier Times Ahead.」全曲とはうって変わって、静かにゆったりとシンプルに心地よく歌っていく曲で、落ち着いて聞くことができます。

Final Draft – Slow Dance

Final Draft の「Slow Dance」EPは、温かみのあるソウルと重厚なハーモニーが心地よく響く作品で、3人組ならではの包容力あるコーラスワークがスロー中心の楽曲を丁寧に形にしている。
往年のソウルを思わせる「Slow Dance」は柔らかなグルーヴが心をほどき、「You」では美しいメロディーと語りかけるようなリードが感情の輪郭を鮮やかに描く。
「Runnin」は穏やかなスローバラードでハーモニーの巧さが際立ち、「End of the Night」ではSpanishなニュアンスをまとった疾走感のあるトラックがグループの“静かな熱”を印象づける。
「Blessed」はゴスペル的な透明感が広がる美しい一曲で、EP全体を温かく締めくくっている。

揺れ動く感情をそのまま響かせる声──Alicia Creti – MINDFIELDS

モントリオール出身で現在はLAを拠点に活動するシンガーソングライター、Alicia Creti。 ソウルフルでパワフル、そして“感情がそのまま声になったような”生々しい歌唱が魅力の新世代R&Bシンガーだ。幼い頃からピアノとともに育ち、家族との深い絆や心の葛藤を音楽に落とし込んできた彼女の歌は、どの曲にも揺れ動く感情の芯が宿っている。

そんな彼女が届けたEP 『MINDFIELDS』 は、全8曲というコンパクトな構成ながら、どの曲も印象的で、彼女の多面的な表現力が詰まった一枚になっている。

1. Mindfields

静かに始まるピアノの響きが美しく、そこに彼女の声が少しずつ熱を帯びながら重なっていく。 曲が進むにつれて感情が膨らんでいく構成は、まさにタイトルの“Mindfields”を進むような緊張感と高揚を描いている。 内側に渦巻く葛藤が、徐々に表情を変えながら爆発していく姿がとてもカッコいい一曲。

3. Strange

柔らかいトーンで歌われるミッドテンポの楽曲。 普段のパワフルな彼女とは少し違い、包み込むような優しさが前面に出ている。 “Strange”というタイトルが示すように、心の中の違和感や微妙な距離感を描きながらも、どこか温かい。 彼女の声の繊細な側面が美しく表れた一曲。

4. Bleeding Me Dry

シックで落ち着いたイントロから始まり、静かな語りかけのような歌声が徐々に熱を帯びていく。 この曲の魅力は、冷静さと激情の境界線を行き来するボーカルの表現力。 “Bleeding Me Dry”というタイトルが示すように、愛の中で消耗していく痛みが滲む。 悲しさと強さが同居する、彼女らしいクールな一曲。

5. Merry Go Round

浮遊感のあるサウンドが心地よく、彼女には珍しい緩やかで穏やかな雰囲気の楽曲。 どこか痛みを受け入れながら応援するような雰囲気の曲です。EPの中でひときわ柔らかい空気を放つ一曲。

6. No One’s Business

印象的な一曲。 耳に残るサビのメロディーと、彼女の力強い歌声が完璧に噛み合っている。 テンポのある楽曲では、彼女の声のインパクトが本当に武器になる。 最後のフェイクで一気に盛り上がる展開は圧巻で、一度聴いたら忘れられない。

7. Overwhelmed

しっとりとしたバラードで、タイトル通り“圧倒されるような情緒”が漂う。 彼女のパワフルな歌声が、静かな曲調の中でより深く響く。 感情の揺れをそのまま声に乗せる彼女のスタイルが最も生きるタイプの楽曲。

8. To Myself

少しファンクなニュアンスを含んだ軽快な一曲。 曲が進むにつれて熱を帯びていき、最後にはしっかりと感情が解き放たれる。 自己対話のようなテーマが、彼女の歌声の強さとよく合っている。

総評

『MINDFIELDS』は、Alicia Creti の感情をそのまま音にしたようなEPだ。 ピアノを軸にした美しいサウンドと感情の揺れをそのまま響かせる歌声。 短い構成ながら、彼女の表現力の幅と、心の奥にある葛藤や優しさが丁寧に描かれている。

新世代R&Bの中でも、ここまで“感情”をリアルに伝えられるシンガーは多くない。 Alicia Creti の魅力が詰まった、聴き応えのある一枚。

Gen Neoの成熟したR&Bが静かに輝くEP ”Through Thick & Thin”

シンガポール出身で、K-POPの制作現場を長く支えてきたR&Bソングライター/プロデューサー、Gen Neo。多作な彼だが、どの作品でも自身の低音テナーボイスの魅力を惜しげもなく発揮してくれる。深く響く声は情熱的でありながら、しっとりと聴かせるバランスが絶妙で、夜の静けさにそっと寄り添うような温度を持っている。

今回のEP Through Thick & Thin は、その声の魅力と、彼が持つ“誠実なR&B”の質感が自然に表れた作品だ。揺れや迷いを抱えながらも、誰かを想い続ける静かな強さが、全体のムードとして穏やかに流れている。

1. Can’t Fool Nobody

しっとりとした雰囲気の中で、Gen Neoの低音がゆっくりと空気を震わせる。 セクシーでありながら、どこか脆さを抱えた歌い方が印象的で、声の熱がじわりと滲む。 その“熱のこもった歌い上げ”が、曲の静かな質感と美しく重なる。

2. Gold Heart

スローだがバラードではなく、どこか妖しげなムードを漂わせる一曲。 控えめなビートの上で声がゆっくりと伸びていき、徐々にまっすぐに歌い上げる後半が心地よい。 “心に残る歌”という言葉がそのまま当てはまる、Gen Neoらしい美しい構成。

3. Hold Me Close

アップテンポなビートが心地よく、EPの中で最も軽やかな曲。 それでも彼の低音テナーボイスはしっかりと存在感を保ち、 スローが得意な彼がアップテンポでも魅力を失わないことを証明している。

4. Times Like This

シングルカットされ、Official Videoも公開されている楽曲。 柔らかい鍵盤と淡いビートの上で、Gen Neoの声がゆったりと漂う。 MVは歌うだけのシンプルな構成だが、静かな夜のムードが美しく、 落ち着いた色調が曲の優しい温度をそのまま閉じ込めている。

5. The Show / 6. Stuck

どちらもリズムの心地よさが際立つ楽曲。 流れるような歌い方が続き、EPの“夜の都会”のムードをさらに深めていく。

7. Like We Once Knew

最後の曲は、少しだけ爽やかな風が吹く。 過去を振り返りながらも前に進もうとする気配があり、 EP全体の“静かな情熱”を締めくくる、美しい余韻のある一曲。

曲の雰囲気は似たトーンで統一されているが、 それでも各曲のメロディーの魅力がしっかりと伝わるのは、 彼がソングライター/プロデューサーとしての確かな技術を持っているからだ。

低音テナーボイスの深み、ミニマルな編成、夜の静けさやほのかな後悔。 そのすべてが、EP Through Thick & Thin の世界観と美しく結びついている。

声が寄り添うR&B──Q Parker, Jai Vaughn – Get Better

Q Parker とセントルイスのゴスペルシンガー Jai Vaughn が届ける“Get Better”は、甘さと優しさがそっと重なるようなデュエット曲。112で培われたQの深い声の温度と、Jai Vaughn の透明感のある歌声が、まるで寄り添うように溶け合っていく。

歌詞はとてもシンプルで静かな励ましのメッセージが軸になっている。ただ寄り添うように“良くなる未来”を信じて歌う。その優しさが、曲全体に柔らかい光を灯している。

Qの包み込むような低音を土台に、Jaiの声がその上に重なる瞬間は、まさに聞く人に“癒し”を与えてくれます、R&Bの甘さとゴスペルの温かさが自然に混ざり合い、聴いているだけで心に沁みわたる静かに胸に残る一曲。 二人の重なり合う歌声がそっと寄り添ってくれる優しいデュエットです。