Gen Neoの成熟したR&Bが静かに輝くEP ”Through Thick & Thin”

シンガポール出身で、K-POPの制作現場を長く支えてきたR&Bソングライター/プロデューサー、Gen Neo。多作な彼だが、どの作品でも自身の低音テナーボイスの魅力を惜しげもなく発揮してくれる。深く響く声は情熱的でありながら、しっとりと聴かせるバランスが絶妙で、夜の静けさにそっと寄り添うような温度を持っている。

今回のEP Through Thick & Thin は、その声の魅力と、彼が持つ“誠実なR&B”の質感が自然に表れた作品だ。揺れや迷いを抱えながらも、誰かを想い続ける静かな強さが、全体のムードとして穏やかに流れている。

1. Can’t Fool Nobody

しっとりとした雰囲気の中で、Gen Neoの低音がゆっくりと空気を震わせる。 セクシーでありながら、どこか脆さを抱えた歌い方が印象的で、声の熱がじわりと滲む。 その“熱のこもった歌い上げ”が、曲の静かな質感と美しく重なる。

2. Gold Heart

スローだがバラードではなく、どこか妖しげなムードを漂わせる一曲。 控えめなビートの上で声がゆっくりと伸びていき、徐々にまっすぐに歌い上げる後半が心地よい。 “心に残る歌”という言葉がそのまま当てはまる、Gen Neoらしい美しい構成。

3. Hold Me Close

アップテンポなビートが心地よく、EPの中で最も軽やかな曲。 それでも彼の低音テナーボイスはしっかりと存在感を保ち、 スローが得意な彼がアップテンポでも魅力を失わないことを証明している。

4. Times Like This

シングルカットされ、Official Videoも公開されている楽曲。 柔らかい鍵盤と淡いビートの上で、Gen Neoの声がゆったりと漂う。 MVは歌うだけのシンプルな構成だが、静かな夜のムードが美しく、 落ち着いた色調が曲の優しい温度をそのまま閉じ込めている。

5. The Show / 6. Stuck

どちらもリズムの心地よさが際立つ楽曲。 流れるような歌い方が続き、EPの“夜の都会”のムードをさらに深めていく。

7. Like We Once Knew

最後の曲は、少しだけ爽やかな風が吹く。 過去を振り返りながらも前に進もうとする気配があり、 EP全体の“静かな情熱”を締めくくる、美しい余韻のある一曲。

曲の雰囲気は似たトーンで統一されているが、 それでも各曲のメロディーの魅力がしっかりと伝わるのは、 彼がソングライター/プロデューサーとしての確かな技術を持っているからだ。

低音テナーボイスの深み、ミニマルな編成、夜の静けさやほのかな後悔。 そのすべてが、EP Through Thick & Thin の世界観と美しく結びついている。

声が寄り添うR&B──Q Parker, Jai Vaughn – Get Better

Q Parker とセントルイスのゴスペルシンガー Jai Vaughn が届ける“Get Better”は、甘さと優しさがそっと重なるようなデュエット曲。112で培われたQの深い声の温度と、Jai Vaughn の透明感のある歌声が、まるで寄り添うように溶け合っていく。

歌詞はとてもシンプルで静かな励ましのメッセージが軸になっている。ただ寄り添うように“良くなる未来”を信じて歌う。その優しさが、曲全体に柔らかい光を灯している。

Qの包み込むような低音を土台に、Jaiの声がその上に重なる瞬間は、まさに聞く人に“癒し”を与えてくれます、R&Bの甘さとゴスペルの温かさが自然に混ざり合い、聴いているだけで心に沁みわたる静かに胸に残る一曲。 二人の重なり合う歌声がそっと寄り添ってくれる優しいデュエットです。

遊び心と恋心が踊り出す──비비 (BIBI) – BUMPA

BIBI姉さんがライブでたびたび披露してきた“BUMPA”がついに正式リリース。いつ出るのだろうと待ち続けていた分、ついに来たという気分です。その瞬間が訪れたことが本当にうれしい。彼女にとってこういう歌謡曲テイストの楽曲は“お手の物”で、BIBIにしか出せない独特の味わいが最初の一音からしっかりにじみ出ている。

歌詞は、恋の高揚感や“ぶつかるように弾ける気持ち”を軽やかに描いたもの。気になる相手に向かって、少し挑発するように近づいていく――そんな茶目っ気のある恋の駆け引きが、明るいテンションのまま進んでいく。重さはなく、むしろ“恋の楽しい瞬間だけをすくい取った”ような軽やかさが心地よい。BIBIの声がその遊び心をやわらかく包み込み、曲全体に自然な笑顔を添えている。

曲全体に漂う“楽しさ”がとても自然で、聴いているこちらまで元気を分けてもらえるような一曲。BIBIはクールなK-POPから歌謡曲風の楽曲まで幅広く歌いこなすけれど、こうした印象的なサビを持つ歌謡曲寄りの楽曲こそ、彼女の魅力がもっとも伸びやかに発揮される。少し茶目っ気のある表情や、楽しそうに歌う姿も相まって、曲の世界がより愛らしく、より鮮やかに立ち上がってくる。

特に2つ目の動画で見せる、ラインダンスのようにみんなで楽しげに踊るシーンは、見ているだけで思わず笑顔になるほど。歌詞の“みんなで楽しむ”空気と映像がぴったり重なっていて、BIBIが放つ“陽のエネルギー”がそのまま映像に溶け込んでいる。 さらに、3つ目の動画の It’s Live では、ライブサウンドでもしっかりと歌の魅力を見せてくれていて、曲の“弾む恋心”がよりかわいらしく伝わってくる。

次々と発表される楽曲がどれも個性的で、どれも強い存在感を放つBIBI。今回の“BUMPA”もまた、彼女の多彩さと遊び心が詰まった一曲として、長く愛される作品になりそうだ。

上品で熱い声が導くR&B──Jai’Len Josey – Serial Romantic

Jai’Len Josey はアトランタ出身のR&Bシンガー。 ブロードウェイで鍛えた表現力豊かなボーカルが特徴で、 Heather Headley を思わせる上品さと熱さを併せ持つ。 Ari Lennox のソングライターとしても知られ、 2026年には Def Jam から初のフルアルバム『Serial Romantic』をリリース。 Tricky Stewart、The-Dream、Leon Thomas ら豪華制作陣が参加し、 彼女の“物語を歌う力”が存分に発揮された作品となっている。

■ 1曲目「Heart and Stirings」

濃厚でありながら流れるように展開するドラマティックな一曲。 美しさと力強さを兼ね備えたボーカルに、冒頭から一気に引き込まれる。

■ 2曲目「Freak」

しっとりとしたイントロから始まり、メロディアスで力強いボーカルが際立つ。 彼女のドラマティックな歌声の魅力が存分に発揮された楽曲。

■ 3曲目「Housewife」

ミッドテンポでじっくり聴かせる一曲。 どの楽曲にも彼女らしさが通底しており、アルバム全体の統一感を感じさせる。

■ 4曲目「New Girl」

イントロのシンセがテクノやハウスの空気をまとい、意外性のあるサウンド。 その中でも感情豊かに歌い上げることで、ボーカルがしっかり中心に立つのが彼女の強み。

■ 6曲目「Love Ain’t Shit」

しっとりとしたムードの中で、ふわりとした柔らかいボーカルを披露。 サビでは伸びやかな歌声が広がり、彼女のスキルの高さを改めて感じさせる。

■ 7曲目「Truce」

サビへ向かうメロディーが印象的で、ゆるやかな雰囲気の中にも余韻が残る。 表現力の豊かさが光る一曲。

■ 8曲目「Won’t Force You」

サビの情熱的なメロディーがかっこよく、 彼女のボーカルの熱量がしっかり伝わってくる。アルバムの中でも盛り上がる一曲。

■ 9曲目「This Time Around」

ミッドテンポで心地よいリズムが耳に残る。 メロディアスなボーカルが自然と身体に染み込んでいく。

■ 10曲目「Out Of My Body」

リズムビート中心のイントロから、力強く情熱的なボーカルが響く。 多彩な声の表情が楽しめる、個人的にも印象深い一曲。

■ 11曲目「Serial Romantic」

タイトル曲はアップテンポで軽快なナンバー。 アルバムの中でも最もノリの良い楽曲で、彼女の新しい側面が見える。

■ 12曲目「Love Somebody」

まっすぐで情熱的なソウル・バラード。 熱量のある歌声が心を掴み、聴く者を深く引き込んでいく。

■ 13曲目「I Believe (Selfish)」

アルバムを締めくくるのは、濁りのない純度の高いソウル・バラード。 “祈り”のような強さを持つボーカルと、美しいコーラスが胸に響く。 感情を押しつけるのではなく、自然と心に届く一曲。

✦ 総評

『Serial Romantic』は、Jai’Len Josey のドラマティックで表現力豊かなボーカルを 存分に味わえる一枚だ。 アルバム全体に統一感がありながら、曲ごとに異なる声の表情が現れ、 彼女の“芯の強さ”がしっかりと伝わってくる。

ミュージカルで鍛えられた声のコントロール、 R&Bの伝統を受け継ぎながら新しいサウンドを取り入れる柔軟さ、 そして何より、感情を物語として届ける力。

Def Jam からの初フルアルバムにふさわしい、 次世代R&Bの中心に立つアーティストの誕生を告げる作品だと感じる。

成熟した声が導く、大人のR&B── Mario – Mood Swings

2000年代、まだ10代で鮮烈にデビューした Mario。 魅了する“天性のボーカル”でR&Bシーンを駆け抜けてきた彼が、 2026年にひさびさに届けるアルバムは、大人のセクシーさと落ち着きをまとったR&Bアルバム『Mood Swings』。 成熟したMarioの魅力がしっかり詰まった一枚だ。

■ 1曲目「Mood Swings」

テンポの良いサウンドにセクシーな空気が漂うオープニング。 美しいメロディーラインが印象的で、アルバムの幕開けにふさわしい一曲。

■ 2曲目「Home」

シングルカットされたスウィートでスムーズなR&B。 しっとりとした正統派のメロディーに、Mario の伸びやかな歌声が重なり、 “これぞR&B”と言いたくなる美しさがある。

■ 3曲目「Moan」

無機質な声のイントロから始まり、語りかけるように進むクールな一曲。
タイトル通り、少し苦しげで湿度のある雰囲気が漂い、
アルバム全体のムードを深く引き込んでいく。

■ 4曲目「Friends feat. Ty Dolla $ign」

Ty Dolla $ign がクールに絡むミッドテンポの楽曲。 アルバムをピシッと締めるような硬質なR&Bで、 Mario が“甘いだけじゃない”一面をしっかり見せてくれる。

■ 5曲目「Chosen」

Mario のボーカルスキルが際立つミッドテンポのクールな一曲。 温かみのある包み込むような歌声が魅力で、 彼の成熟した表現力を感じられる。

■ 6曲目「Still In Love」

切なげなスロウ・バラード。 印象的なメロディーに一気に引き込まれ、 サビに向けての伸びやかなボーカル、透き通る声、 そしてシャウトやフェイクの情熱が胸を打つ。 アルバムの中でも特に心に残る名曲。

■ 7曲目「Fortune Cookie」

Mario の安定感あるボーカルに思わず感嘆する一曲。 ミッドテンポのサウンドにギターのリフが映え、 しっとりと聴けるムードのある楽曲に仕上がっている。

■ 8曲目「Nobody But Us」

最後を飾るのはテンポアップしたクールなR&B。 しっとり終わるのではなく、あえて勢いのある曲を置くことで、 “また最初から聴きたくなる”流れを作っている。 サビにかけてのフェイクやシャウトのかっこよさは圧巻で、 アルバムの中でも特に好きになる人が多いはず。

✦ 総評

ベテランとなった Mario が2026年に届けた『Mood Swings』は、 2000年代のR&Bを振り返るに足る、極上の大人R&B。 甘さ・セクシーさ・クールさ──そのすべてを、 成熟したボーカルと美しいメロディーで表現している。

Mario の“今”を刻んだ、しっとりと深みのある一枚だ。